- はじめに
- コンテンツツーリズムとは和製英語であるが, コンテンツ (映画やアニ
メ, 小説などの舞台となった場所) に旅行に行く (ツーリズム) という意味である
アニメのオタクによる聖地巡礼 (アニメの舞台になった場所を頻繁に訪問するという行 動) も, コンテンツツーリズムの一種である - 本稿では, 大ヒットしたアニメである 「け いおん!」 のアニメオタクをケーススタディすることによって, アニメオタクの行動の特 徴, 特にアニメの舞台の聖地化のプロセスとそのメカニズムを分析する
- 「けいおん!」 アニメの成功とその理由
2009年4月2日 (木), TBS 系列で関東圏から深夜帯でテレビアニメ 「けいおん!」 の 放送が開始された。 - 「けいおん!」 は, 男性以外に
もファン層を広げて大ブレークした
ここまでファン層が広がったのか。 要 因の1つは, アニメを制作した 「京都アニメーション」 (京アニ) の力である - 京アニは2003年以降, 10本以上のテレビアニメシリーズを制作している。 特徴は, その
丁寧さ。
シリーズを通して, 作画の乱れや雑な動きがない。 「けいおん!」 のアニメ化に ゴーサインを出した TBS 事業局の中山佳久プロデューサーは, 「マンガやゲームだと設定 を端折れますけど, アニメ化すると細かな設定をたくさん作らなければいけない。 京都ア ニメーションは, そこもすごく丁寧」 と語る
女性スタッフの多さも特徴である。 監督, 脚本, キャラクターデザインはすべて女性。 山田尚子監督は, 主人公らのキャラクターを作る際, 「キラキラしたオーラを出させたい と思っていました」 と語る。 - 中山プロデューサーが着目したのは, この 「日常」 にこそ潜んでいる
人々の隠れた欲求である。 中山は次のように説明する。 「『けいおん!』 が熱心に練習して
バンドとして成功を目指すマンガだったら, そもそもアニメ化していません。 昔と違って
人々の生活は多様化している。 そんな中では何か1つのゴールを目指すというストーリー
よりも, お茶を飲んだりして楽しく過ごすというストーリーのほうが共感を呼んだのでしょ
う」 と。
山田監督は, 自らが動かした 「けいおん!」 主人公たちを 「ファン目線で見ると, 彼女 たちは憧れの存在になった」 と語る。 なぜか。 演奏のうまさではない。 山田は次のように 説明する。 「なんの打算もなく, 心を開いて気兼ねなくしゃべりあえる友達って, 学生時 代にしか作れないもの。 社会人になってからではなかなか難しいので, そういうのがすご くうらやましいと思うのでしょう」 と。 誰もが通過し, そして大人になれば永遠に得られ ない 「青春」。 一見, 中身がないようで, 実は誰もが憧れるそんな青春の追体験ができる ことが, 「けいおん!」 がブレークした理由であると考えられる。 - アニメオタクの 「けいおん!」 視聴行動の実態
「けいおん!」 は芳文社の月刊4コマ漫画誌 『まんがタイムきらら』 にて2007年5月号 から連載が開始された。 そして, 2008年12月9日に 「けいおん!」 のアニメ化決定が原作 出版社からリリースされた。 - アニメ放送開始前
- アニメ放送開始
2009年4月2日 (木), TBS 系列で関東圏から深夜帯でテレビアニメの放送が開始され た。 オタクの典型的なアニメ視聴方法の特徴は, テレビの前にパソコンを置き, 「2ちゃ んねる」 の実況スレッドを開き, テレビの視聴とスレッドへの書き込みの両方を行うこと にある
平日の深夜2時になぜアニメオタクたちはリアルタイムで 「実況」 をす るのであろうか。 その理由として以下の WEB ページでは, 彼らが, 「一体感を得たい」, 感動や興奮を 「他の人と共有したい」 ということを挙げている - アニメ放送終了後
「けいおん!」 のアニメの放送終了後には, オタクたちは別の 「板」 (アニメ専門) に 移り, 朝まで語り明かす。 恐らく, 他人の視点や新しい発見に触れたいという気持ち, あ るいは 「自分とリンクする他人の気持ち」 を発見したいのではないかと思われる - その後
- 「けいおん!」 アニメオタクの行動と聖地巡礼の分析
アニメオタクの行動の大きな特徴の1つは, 聖地探訪と聖地巡礼である
滋賀県豊郷町石畑にある豊郷小学校旧校舎群にアニメ聖地 「巡礼者」 が押し寄せる。 ア ニメ 「けいおん!」 の舞台となった高校の建物は旧小学校校舎群がモデルで, 2009年4月 の放送開始からファンが訪れだした。 アニメ好きの間ではモデルの土地に足を運ぶことを 「聖地巡礼」 という - 筆者たちは, アニメオタクには5種類のタイプが存在すると考える。
- 聖地の特定を自ら
の使命と捉える 「舞台特定オタク」
アニメのモデルとなった舞台の 「聖地化」 のプロセスは, 「舞台特定オタク」 の活動か ら開始される。 彼らは舞台を特定し, それをインターネット上に提供することで満足感を 得たり, 情報提供後の反応を見て英雄視や神扱いされていることがこの上なく嬉しく感じ るオタクであり, 舞台の特定からインターネット上での舞台情報の提供までで満足し, こ の段階で活動からリタイアしていると考えられる。 - 聖地探訪の先陣を切ることに命を懸ける 「聖地探検
オタク」
その情報を見た 「聖地探検オタク」 は, 誰よりも先にアニメ聖地を訪問し, そし てその訪問の証拠写真を SNS にアップロードすることに命を懸ける。 彼らは特定化され た聖地に万難を排して訪問 (=探検) し, 現地でなければ発見できなかったようなアニメ 聖地の様々な新発見をしようと努力するのである。 そして, 聖地での新発見の数々を現場 から SNS によって逐次的に報告をおこなうことに彼らは存在意義を感じているのである。
特に, 彼らは SNS 上の自らの実況中継的新事実の発見に対し行われる SNS 読者からの 「すごいね!」 などの反応を最も意識する
しかし, 自らが発見した聖地が, 「聖地検分オタク」 によって, あるいはアニメ原作 者から聖地であると認定されたとき, 聖地探検オタクは大いに満足して, この聖地からリ タイアする - 聖地化を実現したいと考えている 「聖地巡礼オタク」
聖地探検オタクによる聖地の現場における様々な新事実の発見により, アニメ聖地の訪 問に強い関心を寄せていた 「聖地巡礼オタク」 はすぐに聖地巡礼活動を開始する。 聖地巡 礼オタクは地元の人々やオタクとの交流を重視し, アニメ聖地の聖地化のためのハード・ ソフト両面の活動を使命とする。 彼らは聖地化のコアとなるオタクなのである
他のファンもアニメに登場するギターやティー セット, レプリカのケーキなどを次々に持ち寄り, 軽音楽部の部室を再現したという行動 は典型的な聖地巡礼オタクなのである。 - 聖地の本物さ審査したい
と思う 「聖地検分オタク」
アニメのモデルとなった舞台が急速に聖地化されているという情報を知って, その聖地 が本物の聖地といえるのかどうかを検分したいと居ても立ってもいられなくなるオタクが 「聖地検分オタク」 である
現地を検分に訪れる評論家 (クリティクス) タイ プのオタクであり, アニメのコンテンツについて誰よりもよく理解していると自負してい る 「物知り」 であり, オタクの世界でも彼の知識は一目置かれる存在である。 彼らは, ロ ジャースのゲイトキーパーとされる 「初期採用者」 に相当するオタクである。 従って, か れらが聖地に対して 「偽物」 と判定した場合には, これ以降のプロセスは進展しないこと になってしまうのである。 - そして聖地化について最も感度の遅れた 「流行追随型オタク」
の5タイプがそうである。
聖地検分オタクのお墨付きを得るようになった聖地は, 今度はマスコミによる報道の対 象になり, それがベースとなりマスメディアもこの聖地を好んで取材対象とするようにな る。 聖地報道の過熱化と 「流行追随型オタク」 が聖地巡礼活動を開始させるようになる。
その結果, 流行追随型オタクのプラスの口コミ (リアル とバーチャル) によって聖地巡礼はますます過熱化することになる - 最後に, アニメオタクではない一般の観光客が 「観光としての聖地巡礼」 を開始する。
アニメグッズなども飛ぶように売れる。 しかし, この段階で流行追随型オタクはあまりに
も一般観光客に迎合し始めた聖地の現状に嫌気がさし, 聖地巡礼からはリタイアする
一般の観光客の聖地巡礼が一巡すると聖地としてのブームが終焉してしまうことになってしまう。 聖地巡礼を継続させるためには, 巡礼者の若返りが必要不可欠とな るのであるが, 長寿アニメではない限り, その実現は困難である。 - 結論と今後の研究の方向性
- 第1に, アニメオタクのアニメ視聴行動の特徴は, アニメを見ながら他のオタクと掲示 板等で交信をしながらアニメを見て感じたことを共有することにある。 気に入ったアニメ の場合には, 掲示板への書き込みは幾何級数的に増加することになる。 TV アニメを視聴 しながら, オタク同士でインターネットで交流するというのは正にオタク (=お宅) の行 動としてはイメージ通りである。 そして, その結果としてアニメがオタクの中で 「神格化」 されるようになり, これが聖地巡礼につながってゆくと考えられる。
- アニメの舞台が聖地化するプロセスとそのメカニズムについて仮説的な解明を 行った。 聖地化のプロセスとメカニズムは, 舞台特定オタクから始まり, 次いで聖地探検 オタク, そして聖地巡礼オタクへ, さらに聖地検分オタクがお墨付きを与えると流行追随 型オタクが聖地巡礼を始める。 また聖地検分オタクの本物との判定によって, その聖地は マスコミの取材の対象となり, 一般人の興味の対象ともなる。 そうすると一般の観光客が 観光として聖地巡礼を行うようになるのである。
- 今後の研究の方向性であるが, 様々な可能性が存在する。
- 第1に, アニメのジャンルに よってオタクの行動や聖地巡礼のプロセスとメカニズムが異なる可能性が考えられる。 従っ て, 複数のジャンルのアニメオタクを分析することが必要となる
- 第2に, TV 放送され ることなく, 「君の名は。」 のような大ヒットした映画の場合にはオタクはどのような行動 をするのであろうか。 あるいは, あまりにもヒットしすぎて, 単なるファンが出現するだ けで, 様々なタイプのオタクは発生しないのであろうか
- 第3の研究課題は, 本研究ではアニメ放送時インターネット上でのオタク間の交流で, アニメへの傾倒の違いによってある種のオタク間にヒエラルキーの関係が形成された。 そ れが今度は聖地巡礼のプロセスやメカニズムに大きく作用することが発見されたが, 今後 はそのヒエラルキーの形成メカニズムを究明する必要がある
- 第4に, 聖地化を永続化させる方法についての理論的, 実践的な研究も必要とされる。 もう1つ重要な研究課題が存在する
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本稿では, 大ヒットしたアニメである 「け いおん!」 のアニメオタクをケーススタディすることによって, アニメオタクの行動の特 徴, 特にアニメの舞台の聖地化のプロセスとそのメカニズムを分析する
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作者針對聖地巡禮的御宅族族群做了五種分類,感覺挺有趣的,能從中看出御宅族內部的階級
作者針對聖地巡禮的御宅族族群做了五種分類,感覺挺有趣的,能從中看出御宅族內部的階級
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