- 「純粋な関係性」の困難とオタク的生き方
団塊世代や新人類世代の若者と、団塊ジュニア世代 以降の若者とでは、大きな違いがみられる。前者は、身近な関係への所属とは別に、世代文化 との同一化や差異化によって、自己を確認する ことができた。一方後者の多くは、同世代の他 者の視線を気にしながら連帯/競争することに 倦み疲れ、身近な関係に閉じこもっている - 純粋な関係性
伝統的絆や世代文化か ら離脱して自らの意思にもとづいて仲間や恋人 との関係を築いていく若者たちの一部は、この 関係から安心や満足を得ている
この構造的特徴により、「純粋な関係 性」を結ぶ者は次の 2 つの問題に直面しやすい - 関係解消の不安
こうした不安は、ときに仲 間や恋人への衝動強迫的な執着(関係嗜癖)を もたらすが、そうした執着は長期的安心を与え てくれない - 関係構築のための負担が
もたらす不満
「純粋な関係性」を維 持するためには、この関係性を能動的に構築し ていく努力が常に要求される。これを負担と感 じる者は、関係から十分な満足を得ることがで きなくなってしまう - ギデンズは「純粋な関 係性」の特徴として次のものを挙げている。
- 社会的・経済的生活の外的諸条件から浮遊している。
- 当事者の自発的な意思によって結ばれる。
- その関係が満足を与える限り続けられる。
- 親族関係や地域共同体等に代わり、個人に情緒的な安心や満足をもたらす。
- オタク
若者研究でも、現実の対人コミュ ニケーションを徹底的に拒絶して虚構世界に 生きる若者として説明されている。また、一人でいることが多いオタクた ちは、一般の若者に比べてさみしい孤独な生を 送っているとイメージされ、貧乏、無職、恋愛 に疎いといった語彙で説明されることも多い - オタクたちの「同人活動」とその概略
- 事例――「同人活動」
本稿はこの「同人活動」を事例として選び、こ れを分析することを通してオタクたちの活動と 関係性の特徴を明らかにすることにしたい。 - 同人活動の概略
- このように同人誌即売会でパロディが 突出していった理由は
- 第 1 に、1980 年代に商業出版があらゆるマンガ表現を許容していく なかで、「同人界」でしか成立しないパロディ が同人作家や一般客の人気テーマとなったため で あ り
- 第 2 に、 パロディが既存の物語の設定を流用して製作で き一般客にも手に取ってもらいやすいため、同 人作家がこぞってこれを描いたためである。そ して、このパロディというテーマを同人界が手 にしたことは、ここを他から区別される相対的 に自律した場として成立させることになった
- 先行研究
- 先行研究①――若者研究
- 先行研究は次の 2 つのオタク像を提示してきた ということができる
- 1 つ目のオタク像は、オタクと対人領域に関 するものであり、「オタクは社交能力が低いた め、他者とのコミュニケーションを完全に拒 絶するか、特定のコミュニケーションを拒絶 する」というものである。
- 2 つ目のオタク像は、オタクと個人領域に関 するものであり、「オタクは、自分の世界に逃 避し閉じこもっている(自閉している)」とい うものである。
- 本来であれば、上記のオタク像が妥当であ ることを主張するためには、先行研究の説明から抽出される、
- オタクは関係性全般を拒絶している
- オタクは情緒的な関係性を拒絶している。
- オタクは個室での活動によって孤独に情緒 的欲望を満たしている。
- 先行研究②――同人作家研究
先行研究に共通 する次の 2 点である。
第 1 に、同人作家をメ ディア・テクストの「受け手」とみなしている こと
第 2 に、その「読み」の独自性・能動 性を明らかにするために、スチュアート・ホー ルの「エンコーディング/デ コーディング」モデルを援用していること、こ れである。 - スチュアート・ホー
ルの「エンコーディング/デ
コーディング」モデル
ホールは、マス・メディアが送るメッセー ジが送り手の意図通りには必ずしも受け手に伝 わらないことを指摘する - 送り手はメッセージ を「こう読むべきだ」という「優先的」コード を用いて記号化(エンコーディング)するが、 受け手はこのメッセージを比較的自律的に解読 (デコーディング)し、「多様な読み」をおこな うことができる。「多様な読み」とは、a)送り 手が受け手を導こうとする読みである「優先的 な読み」、b)受け手がおこなう独自の読みであ る「対抗的な読み」、c)全体的には「優先的な 読み」を認めつつ個別的なレベルで独自の読み を試みる「交渉的な読み」、である
- 「デコーディング/エンコーディング」
連鎖モデル
「情報」がデコーディングされて受け手なり の「意味」が認識されると情報伝達は終わるがネットワークの形成過程では、情報の「受け手」 が新しい情報の「送り手」になるステップが考 えられる。受け手が「交渉的/対抗的」な読み によって得た情報の「意味」は、もとの意味と は違ったものであるため、この「意味」をエン コーディングして生まれるアウトプットも「(新 しい)情報」と呼ぶことができる6。この情報 を「内生情報」、もとのメディア・テクストを「外 生情報」という - 調査方法
- 分析
- 対人領域
命題①
同人作 家や一般客は、関係性を拒絶するどころか、同 人活動をとおして、仲間との対面的・直接的な 交流をごく日常的におこなっている。つまり、 命題①は妥当ではない。
命題②
実際多くの者たちが、同 人誌即売会の魅力をそのような情緒的満足をも たらしてくれる関係を築くことができる点に見いだしている - 個人領域
命題③
同人作家たちが物語を作るのはなぜか。ひとつ の理由として、物語作りそれ自体の楽しさや満 足感が挙げられる。たとえば C は、マンガを描 くのが好きだから同人誌を描いていると説明す る。
。彼らは、自分が創った物語を喜んでくれ る読者とのつながりを感じることによっても満 足を得ており、そうした満足感が創作の動機に なっている - 考察
- 「純粋な関係性」としてのオタクたち
のつながり
それでは、従来見落されてきたため理論的考 察がほとんど蓄積されていない、オタクたちの 対面的・直接的・想像的な関係を、どのように 理解すればよいだろうか。本稿は、ギデンズの 「純粋な関係性」概念が、このつながりの個別 性を理解するための有効な視点を与えてくれる と主張したい。 - 同人作家や一般客たちが仲間と築いている関 係は、制度的基盤の支えがないところで(ⅰ)、 個人の自発的な意思によって結ばれ(ⅱ)、そ れが互いに満足をもたらす限り続けられ(ⅲ)、 それへのコミットメントが情緒的な安心や満 足、自己の存在の意味をもたらしてくれる(ⅳ) 関係性である。
- 「純粋な関係性」は、近代社会における時空間 の拡大化と情報通信などの抽象的システムの発 達によって、たとえ距離を隔てても成立するこ とができるからである
- 「自閉」的な趣味活動がもたらす「純
粋な関係性」
こうした満足感の高さの理由は、オタクたち の間の「純粋な関係性」と「自閉」のバラン スのなかに見いだすことができる。オタクたち は、アニメやゲーム、あるいは同人誌といった 「外生情報」を能動的に読解し、その「読み」 から内生情報を創出するという、「自閉」的な 趣味活動から得られる満足感を重視しているた め、他者との関係に過剰な期待をかけることが ない。ゆえに関係解消にもさほどショックを受 けることも執着することもないのだと考えられ る。
オタクたちの「自閉」的な趣味 活動は、「純粋な関係性」が内包する「関係解 消の不安」と「関係構築のための負担がもた らす不満」という問題を解決し、「純粋な関係 性」から高い満足感を獲得することを可能にさ せている。個人空間は、関係性を謳歌するため の必要条件なのである - 「純粋な関係性」がもたらす「自閉」
的な趣味活動
オタクたちが安心し て個室での「自閉」的な趣味活動に励むことが できるのは、自分が所有し創出する情報が、仲 間たちに有意味なものとして受け取ってもらえ るとあてにできるからである
言いかえれば、「自閉」的な 趣味活動と「純粋な関係性」は、循環的に互い を創出しているのである(「純粋な関係性」⇔「自 閉」的な趣味活動)。 - 結論
- オタクたちは、「純粋な関係性」を築き、そこから安心と満足を得ている。
- オタクたちの「純粋な関係性」は、「自閉」的な趣味活動が創出する情報を媒介とし て築かれている。
- オタクたちの「純粋な関係性」は、彼らが「自閉」的な趣味活動を大切にしてい るために、「関係解消の不安」と「関係構築のための負担がもたらす不満」とい う 2 つの問題を免れている。
- オタクたちの「自閉」的な趣味活動を意味づけ、動機づけているのは、「純粋な 関係性」である。
- オタクたちが生活に満足しているのは、「純粋な関係性」と「自閉」的な趣味活 動の好循環のためである。
- 今後の課題
- オタクの自 己アイデンティティとその活動との関係やオタ ク・サブカルチャー内の多様性といった問題
- オタクの関係性と個室での活動との 結びつきに関する大きな図式を提示すること
- パロディの製作過程、オ タクたちの対面的関係とメディア媒介的関係の 相違と結びつき、「自閉」的活動における満足 感と「純粋な関係性」における満足感との相違 といった個々の論点を詳細に分析すること
覺得這篇文章想要討論什麼?
藉由田野的方式,提出一份オタク活動與建立關係的方式,並分析其內涵
我覺得這篇文章有哪些重點?或是我的心得?
我覺得找少數幾個人好像代表性不太夠,如果再多個問卷調查大概不錯
反正文中描繪的那套關係建立的方式,架構也滿完整的
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反正文中描繪的那套關係建立的方式,架構也滿完整的
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