2020年11月23日 星期一

〈「純粋な関係性」と「自閉」 ――「同人界」におけるオタクの活動の分析から――七邊信重〉

  1. 「純粋な関係性」の困難とオタク的生き方
    団塊世代や新人類世代の若者と、団塊ジュニア世代 以降の若者とでは、大きな違いがみられる。前者は、身近な関係への所属とは別に、世代文化 との同一化や差異化によって、自己を確認する ことができた。一方後者の多くは、同世代の他 者の視線を気にしながら連帯/競争することに 倦み疲れ、身近な関係に閉じこもっている
    1. 純粋な関係性
      伝統的絆や世代文化か ら離脱して自らの意思にもとづいて仲間や恋人 との関係を築いていく若者たちの一部は、この 関係から安心や満足を得ている

      この構造的特徴により、「純粋な関係 性」を結ぶ者は次の 2 つの問題に直面しやすい
      1. 関係解消の不安
        こうした不安は、ときに仲 間や恋人への衝動強迫的な執着(関係嗜癖)を もたらすが、そうした執着は長期的安心を与え てくれない
      2. 関係構築のための負担が もたらす不満
        「純粋な関係性」を維 持するためには、この関係性を能動的に構築し ていく努力が常に要求される。これを負担と感 じる者は、関係から十分な満足を得ることがで きなくなってしまう
    2. ギデンズは「純粋な関 係性」の特徴として次のものを挙げている。
      1. 社会的・経済的生活の外的諸条件から浮遊している。
      2. 当事者の自発的な意思によって結ばれる。
      3. その関係が満足を与える限り続けられる。
      4. 親族関係や地域共同体等に代わり、個人に情緒的な安心や満足をもたらす。
    3. オタク
      若者研究でも、現実の対人コミュ ニケーションを徹底的に拒絶して虚構世界に 生きる若者として説明されている。また、一人でいることが多いオタクた ちは、一般の若者に比べてさみしい孤独な生を 送っているとイメージされ、貧乏、無職、恋愛 に疎いといった語彙で説明されることも多い
  2. オタクたちの「同人活動」とその概略
    1. 事例――「同人活動」
      本稿はこの「同人活動」を事例として選び、こ れを分析することを通してオタクたちの活動と 関係性の特徴を明らかにすることにしたい。
    2. 同人活動の概略
      1. このように同人誌即売会でパロディが 突出していった理由は
        1. 第 1 に、1980 年代に商業出版があらゆるマンガ表現を許容していく なかで、「同人界」でしか成立しないパロディ が同人作家や一般客の人気テーマとなったため で あ り
        2. 第 2 に、 パロディが既存の物語の設定を流用して製作で き一般客にも手に取ってもらいやすいため、同 人作家がこぞってこれを描いたためである。そ して、このパロディというテーマを同人界が手 にしたことは、ここを他から区別される相対的 に自律した場として成立させることになった
  3.  先行研究
    1. 先行研究①――若者研究
      1. 先行研究は次の 2 つのオタク像を提示してきた ということができる
        1. 1 つ目のオタク像は、オタクと対人領域に関 するものであり、「オタクは社交能力が低いた め、他者とのコミュニケーションを完全に拒 絶するか、特定のコミュニケーションを拒絶 する」というものである。
        2. 2 つ目のオタク像は、オタクと個人領域に関 するものであり、「オタクは、自分の世界に逃 避し閉じこもっている(自閉している)」とい うものである。
      2. 本来であれば、上記のオタク像が妥当であ ることを主張するためには、先行研究の説明から抽出される、
        1. オタクは関係性全般を拒絶している
        2. オタクは情緒的な関係性を拒絶している。
        3. オタクは個室での活動によって孤独に情緒 的欲望を満たしている。
    2. 先行研究②――同人作家研究
      先行研究に共通 する次の 2 点である。
      第 1 に、同人作家をメ ディア・テクストの「受け手」とみなしている こと
      第 2 に、その「読み」の独自性・能動 性を明らかにするために、スチュアート・ホー ルの「エンコーディング/デ コーディング」モデルを援用していること、こ れである。
      1. スチュアート・ホー ルの「エンコーディング/デ コーディング」モデル
        ホールは、マス・メディアが送るメッセー ジが送り手の意図通りには必ずしも受け手に伝 わらないことを指摘する
        1. 送り手はメッセージ を「こう読むべきだ」という「優先的」コード を用いて記号化(エンコーディング)するが、 受け手はこのメッセージを比較的自律的に解読 (デコーディング)し、「多様な読み」をおこな うことができる。「多様な読み」とは、a)送り 手が受け手を導こうとする読みである「優先的 な読み」、b)受け手がおこなう独自の読みであ る「対抗的な読み」、c)全体的には「優先的な 読み」を認めつつ個別的なレベルで独自の読み を試みる「交渉的な読み」、である
    3. 「デコーディング/エンコーディング」 連鎖モデル
      「情報」がデコーディングされて受け手なり の「意味」が認識されると情報伝達は終わるがネットワークの形成過程では、情報の「受け手」 が新しい情報の「送り手」になるステップが考 えられる。受け手が「交渉的/対抗的」な読み によって得た情報の「意味」は、もとの意味と は違ったものであるため、この「意味」をエン コーディングして生まれるアウトプットも「(新 しい)情報」と呼ぶことができる6。この情報 を「内生情報」、もとのメディア・テクストを「外 生情報」という


  4. 調査方法
  5. 分析
    1. 対人領域
      命題①
      同人作 家や一般客は、関係性を拒絶するどころか、同 人活動をとおして、仲間との対面的・直接的な 交流をごく日常的におこなっている。つまり、 命題①は妥当ではない。
      命題②
      実際多くの者たちが、同 人誌即売会の魅力をそのような情緒的満足をも たらしてくれる関係を築くことができる点に見いだしている 
    2. 個人領域
      命題③
      同人作家たちが物語を作るのはなぜか。ひとつ の理由として、物語作りそれ自体の楽しさや満 足感が挙げられる。たとえば C は、マンガを描 くのが好きだから同人誌を描いていると説明す る。
      。彼らは、自分が創った物語を喜んでくれ る読者とのつながりを感じることによっても満 足を得ており、そうした満足感が創作の動機に なっている
  6. 考察
    1. 「純粋な関係性」としてのオタクたち のつながり
      それでは、従来見落されてきたため理論的考 察がほとんど蓄積されていない、オタクたちの 対面的・直接的・想像的な関係を、どのように 理解すればよいだろうか。本稿は、ギデンズの 「純粋な関係性」概念が、このつながりの個別 性を理解するための有効な視点を与えてくれる と主張したい。
      1. 同人作家や一般客たちが仲間と築いている関 係は、制度的基盤の支えがないところで(ⅰ)、 個人の自発的な意思によって結ばれ(ⅱ)、そ れが互いに満足をもたらす限り続けられ(ⅲ)、 それへのコミットメントが情緒的な安心や満 足、自己の存在の意味をもたらしてくれる(ⅳ) 関係性である。
      2. 「純粋な関係性」は、近代社会における時空間 の拡大化と情報通信などの抽象的システムの発 達によって、たとえ距離を隔てても成立するこ とができるからである
    2. 「自閉」的な趣味活動がもたらす「純 粋な関係性」
      こうした満足感の高さの理由は、オタクたち の間の「純粋な関係性」と「自閉」のバラン スのなかに見いだすことができる。オタクたち は、アニメやゲーム、あるいは同人誌といった 「外生情報」を能動的に読解し、その「読み」 から内生情報を創出するという、「自閉」的な 趣味活動から得られる満足感を重視しているた め、他者との関係に過剰な期待をかけることが ない。ゆえに関係解消にもさほどショックを受 けることも執着することもないのだと考えられ る。

      オタクたちの「自閉」的な趣味 活動は、「純粋な関係性」が内包する「関係解 消の不安」と「関係構築のための負担がもた らす不満」という問題を解決し、「純粋な関係 性」から高い満足感を獲得することを可能にさ せている。個人空間は、関係性を謳歌するため の必要条件なのである
    3. 「純粋な関係性」がもたらす「自閉」 的な趣味活動
      オタクたちが安心し て個室での「自閉」的な趣味活動に励むことが できるのは、自分が所有し創出する情報が、仲 間たちに有意味なものとして受け取ってもらえ るとあてにできるからである
      言いかえれば、「自閉」的な 趣味活動と「純粋な関係性」は、循環的に互い を創出しているのである(「純粋な関係性」⇔「自 閉」的な趣味活動)。
  7. 結論
    1. オタクたちは、「純粋な関係性」を築き、そこから安心と満足を得ている。
    2. オタクたちの「純粋な関係性」は、「自閉」的な趣味活動が創出する情報を媒介とし て築かれている。 
    3. オタクたちの「純粋な関係性」は、彼らが「自閉」的な趣味活動を大切にしてい るために、「関係解消の不安」と「関係構築のための負担がもたらす不満」とい う 2 つの問題を免れている。
    4. オタクたちの「自閉」的な趣味活動を意味づけ、動機づけているのは、「純粋な 関係性」である。
    5. オタクたちが生活に満足しているのは、「純粋な関係性」と「自閉」的な趣味活 動の好循環のためである。
    6. 今後の課題
      1. オタクの自 己アイデンティティとその活動との関係やオタ ク・サブカルチャー内の多様性といった問題
      2. オタクの関係性と個室での活動との 結びつきに関する大きな図式を提示すること
      3. パロディの製作過程、オ タクたちの対面的関係とメディア媒介的関係の 相違と結びつき、「自閉」的活動における満足 感と「純粋な関係性」における満足感との相違 といった個々の論点を詳細に分析すること

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藉由田野的方式,提出一份オタク活動與建立關係的方式,並分析其內涵

我覺得這篇文章有哪些重點?或是我的心得?
我覺得找少數幾個人好像代表性不太夠,如果再多個問卷調查大概不錯
反正文中描繪的那套關係建立的方式,架構也滿完整的

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